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百年工房に生きる技

生地づくりから絵の具調合まで、
すべてを行う百年工房

現在、深川製磁の作品を日々生み出しているのは、明治期に建てられた工房。初代・深川忠次がみずからイギリスで見学してきた、ウェッジウッドの工房を参考に建てられたものです。背景には山、すぐ傍らには小川のせせらぎ……有田の自然に囲まれた環境は、やきものづくりに最適といわれています。

深川製磁は創業以来、生地づくりから絵の具の調合に至るまで、磁器の完成に必要なすべての工程を自社で一貫して行う稀有なものづくりを継承しています。造形、文様、彩色、あらゆる要素を自在に組み合わせられるがゆえに、作品ごとに深いデザイン表現が可能です。ひとつでも失敗があれば後戻りが効かない緊張感のなかで、各工程を担当する職人たちが技を結集し、一体となって作品をつくり上げます。

数ある工程のうち、深川製磁の特徴として挙げられるのは、生地づくり、自家調合の絵の具と絵付け、そして通常より高い焼成温度の3点が挙げられます。「フカガワブルー」と呼ばれる鮮やかな青、そして光にかざすと透けるほどの透白磁——ほかに類を見ない美しさは、たしかな技術によって支えられたものです。

生地づくりから魂を込めて

深川製磁の工房では、粘土を精製するところから磁器づくりが始まります。原料として深川製磁が使用しているのは、熊本県天草地方で採れる上質な陶石。ハンマーやミルを使ってこれを微細に砕き、水分を抜きながら練り上げて、粘土をつくります。

出来上がった粘土は、「ろくろ」または石膏の「型」を使って成型。深川製磁では、その石膏型、さらには石膏型をつくるためのもととなる原型から、職人の手によってつくられています。

成型したあとは、余分な箇所を削りながら、さらに細かく形を調整。この工程では「1mmの4分の1」の微細なレベルまで感覚的に判断できる熟練した職人の手により、絶妙な角度やカーブに至るまで魂の込もった、美しい造形がつくり上げられます。

自家調合の絵の具で、
器に生命を与える

深川製磁ならではの澄み切った青色をつくり出すのは、コバルトなどの鉱物から調合した絵付け顔料「呉須」。この一色で微細な陰影、濃淡まで表現することを可能にしているのは、職人の経験と技。ときには何本もの筆を使い分けながら、繊細な筆使いで器に生命を与えてゆきます。この染付の工程を担う職人をはじめ、深川製磁には7人の伝統工芸士が在籍しています。

絵付けに使われる絵の具には約600種類の色があり、そのほとんどが自家調合の深川オリジナルです。絵の具の調合には専門の職人がおり、毎日異なる気温や湿度によって微妙な調節をほどこしています。

初代・忠次が西洋と日本のエッセンスを巧みに織り交ぜてつくり上げた独自のデザインは、現在も職人の手による再解釈を重ねながら継承され続けています。上絵付けでは赤や黒、黄、緑などのほか、金や銀の色絵の具を用いて絵柄を描いてゆきます。

1350℃で焼き切り、
澄み切った白と鮮やかな青を

深川製磁では、一般的な磁器の焼成温度よりも50〜100℃ほど高温となる約1350℃で焼き上げます。わずか50℃の違いでも、磁器はより液体に近い不安定な状態となるため、リスクと難易度はぐっと上がります。13〜14時間にもわたる焼成中は、職人が絶えず火の色を見ながら、最適な温度と窯内の環境を保ちます。

高温で酸素を抜きながらしっかりと焼き切ることにより、深川製磁の代名詞ともなっている透明感のある白、鮮やかな青の色味が引き出され、軽量かつ強度の高い品に仕上がります。

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