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1900年パリ万国博覧会で金賞を受賞した大花瓶です。博覧会では、多くの 大花瓶が出展されておりましたがこの花瓶が、一際、異彩を放っていたのは ろくろ成形でありながらボディーの下方に向かって細くすぼめた形状になって いることです。この形状では、1350度もの高温焼成の過程で「よがみ」「へたり」 「破損」が必ずと言って良いほど生じています。完全に取れたこと自体まさに 「奇跡のかたち」と呼ばれるゆえんになっているのです。 忠次は、その上に欧州人の理解が深まるようにひとつのデザイン的工夫を盛り込み ます。東洋の文様を異文化のアートとして捉えていた欧州人に対し六角に画面を分け 深川製磁得意な文様を窓絵にして表現することによってデザインの整理をして、 ひとつひとつのデザインの魅力が強調されるように配しています。また、冠の龍の彫刻は、 欧州の陶磁器花瓶が、彫刻を施すスタイルに刺激されたものでわざわざ京都から二宮都水 を呼び制作させたものです。 さらに底部には、白磁で陽刻を施しバランスをとっています。目くるめくようなその精緻な 絵模様そのダイナミックなかたち。大花瓶に接した人は、その存在に圧倒されてしまいます。
有田焼の図案帳は、大変珍しい。なぜなら有田焼は、元来「手がしら」とよばれる 実物見本を参考にして作ることが多い。それは、かたちの持つ雰囲気とか染付の 具合とか赤絵ののりなどを手の内にいれてから仕事にかかるからです。 それでは、なぜ深川忠次は、膨大なデザイン帳をもっていたのか。 欧州で多くの顧客を持っていた忠次は、顧客のリプレスに答えるためにあえて デザイン帳を製作したのです。これにより忠次は顧客の注文に対しインボイスを 送ることができたのです。明治期の貿易品のディナーウェアーの中には、染付や 赤絵を仔細見ると不揃いが見て取れるのもこのことに起因しております。ただ、 このデザイン帳は、深川様式を継承していく上で貴重な財産になっているだけ ではなく、明治陶磁器の記録として重要な資料になっております。